LVMHメティエダール(LVMH Métiers d’Art)- アーティストのラファエル・バロンティーニがシンガポールのHeng Long Leather(ヘンローンレザー)社での研修期間を終了

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2020年1月、ラファエル・バロンティーニは、クロコダイルレザー加工のスペシャリストとして世界的に名高いシンガポールのヘンローンレザー社にて、6ヶ月にわたるLVMHメティエダール研修プログラムを開始しました。フランス人のアーティストである彼が、革なめし工場の職人達との共同作業による創作活動について、またシンガポールでの研修がこの上なく実り多いものとなった背景について語っています。

 

パリ国立高等美術学校およびニューヨークのハンターカレッジ美術課程の卒業生である35歳のアーティストのラファエル・バロンティーニと、シンガポールのヘンローンレザーとのコラボレーションは意外な組み合わせにも見えました。彼のアーティストとしてのオリジナリティは、シルクスクリーンを布地に施すことにあります。パリ国立高等美術学校で学んでいたとき、ラファエル・バロンティーニはフレームに収める形以外の絵画表現の探求を始め、特に旗などの生地の表面にシルクスクリーンを施すコラージュ作品を創り始めました。

クロコダイルレザーの革なめしのスペシャリストとして国際的に名高いヘンローンレザー社の職人達と共同作業を行うことで、刺激的な作品を新たに生み出す方向性の扉が開けました。「研修のおかげでレザー素材を自身の作品に取り入れる術を学ぶことができました。革なめし工場の特別な加工技術に触れ素材の特性を習得できたことは大きな発見です」と彼は言います。

© Raphaël Barontini

LVMHメティエダール(LVMH Métiers d’Art)の研修は、それまで革素材を扱った経験の無いラファエル・バロンティーニにとって、刺激的な挑戦となりました。柔らかい素材へのスクリーン印刷や染料プリントの手法には手慣れている彼は、表面にいびつな凹凸がある厚手のクロコダイルレザーに自身のテクニックを取り入れる方法を学びました。

この特別な素材の持ち味を最大限に活かすために、ラファエル・バロンティーニは革なめし工場の職人達と共同作業を行いました。「クロコダイルレザーの加工技術の一部には高度な緻密さが要求され、私一人では作業することができませんでした。彼らの素晴らしい技によって、レザー本来の質を損なうことなく真に納得のいく結果を得ることができました。こうして革なめし工場の職人の方々との本当の意味でのコラボレーションが誕生したのです」と彼は語ります。フランスの画家である彼は、工場での作業工程で出た切れ端や様々な種類のレザー素材に触れることで、創造の幅を広げることができました。 さらに彼の芸術的な視点は、通常は廃棄されるものにも素晴らしい第二の命を吹き込み、価値あるものに生まれ変わらせました。彼は言います。「例えば、規定の厚さにするためにワニ革から削り取られた極薄の革の層を用いたスリットが、革を用いた作品に求めていたしなやかさを与えてくれることに気付いたのです」

単なる専門的な技能の共有にとどまらず、ラファエル・バロンティーニが体験した研修は、彼のアーティストとしての技量と物事に対する視点のいずれもより豊かなものにしてくれた、と彼は言います。「シンガポールの驚くべき文化的なるつぼを目の当たりにして、とてもわくわくしました。都会の風景のあちこちで竹竿を目にするといった毎日の出来事が、強く私の心に刻まれています。インスピレーションを受けた私は、例えば今後のインスタレーションにおいて、自分の制作した旗の作品がはためくポールの材料として竹竿を用いることにしました。現地のクラフツマンシップにも触発され、私が出会った90歳のおばあちゃんが作る手作りの組み紐などは、自分のいくつかの作品で装飾に用いました。」

© Raphaël Barontini

シンガポールの歴史が彼の芸術作品を育んだのです。「シンガポールの歴史においてシルクロードが重要であることを知り、シルクを自分の作品に取り入れたくなったのです。LVMHメティエダールのプログラムの運営サイドから与えられた白紙委任状と、専門的な職人のネットワークのおかげで、LVMHの複数のメゾンと取引のあるフランスのアトリエTwinpixから素晴らしいシルクを入手することができ、シンガポール滞在中に制作した作品に取り入れました」と彼は言います。

ここ数年の間作品づくりの新たな方向性を探してきたラファエル・バロンティーニは、LVMHメティエダールの自由な空気の中、研修期間中様々な模索をする機会を得たのです。さらには、ヘンローンレザー社での研修中に制作した、クロコダイルレザーを用いたケープ、チュニック、ロデオのチャップスといった飾り衣装の制作を、その後も続けることになったのです。

ラファエル・バロンティーニが研修中に制作した作品は展覧会で展示され、2021年初頭に出版予定の本のテーマになる予定です。このフランス人のアーティストは、自身の作品で主要なテーマとなっている架空のクレオールの登場人物達を中心にした作品群を発表する予定です。ラファエル・バロンティーニは、中世と古代エジプトをモチーフに、もとの素材と素材の加工による変化の対比による相互作用を通じて、神話的な英雄が登場する想像世界の表現を試みています。これらの作品では、ウェアラブルな作品や架空のパレードで祝福される英雄達を制作し、絵画史上における黒人の登場人物の描写にも挑戦しています。

© Raphaël Barontini