LVMHメゾンが、パリ ファッションウィークにて、2021年のメンズ 春夏コレクションを発表。オールデジタルでの個性的なショーが披露されました。
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© Louis Vuitton
今年のパリ ファッションウィークで披露された、2021 春夏 メンズコレクションは、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、すべてオンラインでの発表となりました。ランウェイという舞台からオンラインショーにシフトしたことで、LVMHグループのファッションメゾンは従来のプレタポルテ コレクションのショーについて再考し、趣向を凝らして挑みました。ベルルッティ、ルイ・ヴィトン、ディオール、ロエベのショーを振り返ります。
ベルルッティ
セラミックアートをこよなく愛するコレクターという一面をもつ、ベルルッティのクリエイティブ・ディレクター クリス・ヴァン・アッシュは、その情熱を、靴職人ブランドとして名高いベルルッティのサヴォアフェールに融合させました。ベルギー出身のデザイナーは、2021 春夏 メンズウェア コレクションの制作にあたり、セラミックアーティストとして活躍するブライアン・ロシュフォールとのコラボレーションを実現。アーティストの作品の特徴である溢れるような活力が、ベルルッティの上質なテクスチャーに見事に溶け込んでいます。披露された動画では、スタイリッシュなルックにフォーカスしつつ、パリのクリス・ヴァン・アッシュと、ロサンゼルスのブライアン・ロシュフォールが、オンラインで共同制作しているという設定で対話をします。
クリス・ヴァン・アッシュならではのセンスが光るテーラリング クリエイションが、新たなインスピレーションによって一歩先の領域へと押し広げられたこの新しいコレクションは、ベルルッティ ファンの興味をより一層惹きつけることでしょう。
ルイ・ヴィトン
メンズ アーティスティック・ディレクターのヴァージル・アブローによる新たなストーリーは、ファッションウィークの街、パリにやってきたアニメーションキャラクターによる動画で描かれています。アニメの世界から飛び出したようなキャラクターたちが、アニエールの工房や、ポンヌフ通りにあるメゾンの本社など、ルイ・ヴィトンにゆかりのあるスポットをまわります。ヴァージル・アブローはあえて無邪気なイラスト調のデザインを取り入れ、ステレオタイプに汚されていない純粋な子供の目を通して見た世界を表現しました。
パリを存分に満喫したキャラクターたちは、コンテナ船に乗ってセーヌ川を下り、海の向こうへと旅立ちます。この旅の始まりが、ヴァージル・アブローが手掛けた2021 春夏 メンズコレクションのスタートの合図。ストーリーの終わりではありません。アメリカ出身のデザイナーが創作した最新コレクションの発表は、今年の年末までかけて、場所と文化の繋がりを構築しながらシリーズで披露する予定です。パリを後にしたキャラクターたちは、コレクションの披露のため、次の目的地である上海へ向かい、さらに東京へと冒険を続けます。
今シーズンの中心的なテーマとなったのは、サステナビリティ。積極的なアップサイクルによって、前コレクションで使われなかったアイデアやアイテム、余り布などを活用しています。ヴァージル・アブローが掲げる目標は、衣類が製造されていく過程や、ファッション業界でのシーズナリティという概念を変えていくこと。過去のコレクションがほんの数か月で消えていくということを見直し、クリエイティビティをより一層発揮しながら、再考し再解釈を加えることで、シーズンを重ねるたびにより素晴らしい作品へと統合していくことを目指しています。
ロエベ
スペイン発のメゾン ロエベは、クリエイティブ・ディレクター ジョナサン・アンダーソンが、2021 春夏 メンズウェアコレクションを発表。ランウェイでのショーが叶わない中、革新的なアプローチで、ファッションショーならではの魅力や高揚感を再現しました。コレクションのショーは、メゾンを愛する友へ送られたオリジナルボックスの中にあるという、かつてない独自のスタイル。この、「Show-in-a-Box (箱に収められたショー)」は、バーチャルという領域をはるかに超えて、よりリアルな時間と空間を演出します。コレクション制作のインスピレーションソースが添えられているのはもちろん、いくつかのキールックは立体的に眺められる仕様になっており、さらに実際に手で触れて体験できるように、コレクションで使用されたカラーパレットや素材のサンプルが、ボックスに収められています。
また、2021 春夏 コレクションにまつわるクリエイターの想いを深く掘り下げた複数の追加コンテンツが、オンラインで順に公開されました。いくつかの作品で使用された、伝統的な日本の染物技術、絞りの芸術性を紹介した動画もその一つです。
木製のマネキンを使用して紹介されたコレクションそのものは、シックでシンプルなスタイル。ジョナサン・アンダーソンが手掛けた作品はどれも、動きが感じられる曲線と流れるようなラインが印象的です。ボリュームとテクスチャーを重ねることで、弧を描くような動きを際立たせた作品の至るところに、メゾンが常に大切にしてきたクラフツマンシップへのオマージュが表れています。
ディオール
ディオールのキム・ジョーンズが発表した、2021 春夏 メンズコレクションは、ガーナ人アーティストのアモアコ・ボアフォへのトリビュートとなりました。何年も前から、アフリカは豊かなインスピレーションソースとしてメゾンが注目してきた地。それはまた、幼少期にボツワナ、タンザニア、エチオピア、ケニア、ガーナといったアフリカ諸国で暮した経験のある、メゾンのデザイナーにとっても同じでした。アモアコ・ボアフォが描いた有名な肖像画シリーズ、『ブラック・ディアスポラ』は、画家自身のアイデンティティの探究であると同時に、黒人としてのアイデンティティを問いかけ、とりわけ黒人男性のマスキュリニティ(男らしさ)が表現された作品です。ディオールの歴史とオートクチュール技術を吹き込み、彼の作品を再現するように仕立てられた衣服は、文化の融合を象徴していると言えるでしょう。コレクションのひとつひとつがコラボレーションであり、2つの世界の対話。クチュールメゾンならではの完璧なカットを施し、ディオールのモアレ生地で仕立てたスポーティーなアイテムに、アモアコ・ボアフォの鮮やかなカラーがみごとにマッチしています。表面に、プリントやレイヤーを重ねた複雑な仕上げのジャカードパターンを施したリブニットは、絵画を思わせます。刺繍やニットウェア、インターシャなどを巧みに駆使した作品に、モデルたちが腕を通すことで、ボアフォの作品がそのまま体現されているのです。
ディオールの2021 春夏 メンズウェアコレクションを発表した動画は、2部構成。第1部は、サウンドトラックを含む編集を映像アーティストのクリス・カニンガムが手掛け、ガーナにあるアモアコ・ボアフォのアトリエと、ロンドンで撮影された画像が使用されています。第2部は、キム・ジョーンズのクリエイションにフォーカスした内容で、ジャッキー・ニッカーソンのディレクションで制作されています。