職業は?
ゲランでダム ドゥ ターブルをしています。私の役割はメゾンのフレグランスの瓶を美しく仕上げることです。シルクの糸や金の糸、アーティストがつくるビジューなど、多様な装飾品を使ってボトルを飾ります。ゲランにはこの職種に固有のさまざまなテクニックがあります。たとえば、barbichage (バルビシャージュ) というテクニックは、シルク糸にブラシをかけて一定のボリューム感を出すもので、baudruchage (ボードリュシャージュ) は、糸を使って瓶に栓をする技術です。また、さまざまな結び方も体得していて、蝶結びやタイ結び、ツイスト結びなど、ボトルの装飾に用いています。
経歴は?
もともとは美容師になるための勉強をしていて、ほんの短い間ですが美容師としても働いていました。そして、イブリーヌ県のオルファンにある私の家の近くにメゾンが拠点を設けた28年前、私は運命によってゲランに導かれました。ダム ドゥ ターブルの仕事に就かないかと勧められたのです。仕事に就く前はそれが何かまったく知りませんでしたので、すでに数年働いていた女性のもとで、すべて現場で覚えました。今では、私が技術を教える側に回っています。
この職業を若者たちへ受け継いでいくこととは?
技術を継承することは、ダム ドゥ ターブルにとって極めて重要です。というのも、この職種はメゾン ゲラン独自のものなので、教える学校がないのです。私が特に愛着を覚えているのもその点です。私は仕事がきちんと行われることが好きなので、新人がメゾンの水準に見合った仕事をできたとき、とてもうれしく思います。また、この素晴らしいサヴォアフェールについてデモンストレーションを行ったときなど、一般の人たちにこの仕事を知ってもらえるときはとても喜びを感じます。
この職業に求められる主な資質とは?
まずは、手先が器用なこと。ダム ドゥ ターブルにふさわしい人を選ぶ際には必ずそれが求められます。次に、辛抱強くなくてはなりません。作業は細かく、何時間も穏やかさを維持できなくてはいけません。最後に、一番本質的なことですが、ダム ドゥ ターブルはクリエイティブでなければなりません。どうしたらそのボトルを一番美しく装飾できるか。それを考えるために、クラシカルな結び方に留まらず、製作チームとさまざまなやり取りをしています。
この職業で感動を覚えることは?
私は複雑さが好きで、瓶の装飾をどう表現するかというのは、ある種、挑戦でもあります。ですから、特別なクリエイションを手掛けるのが好きです。たとえば、ミツコのボトルは、高度な器用さが求められます。また、メゾン ゲラン独自のサヴォアフェールと伝統を永続させるという発想もとても好きです。
記憶に残るエピソードを教えてください
2018年に、文化大臣から芸術文化勲章のシュバリエを授与されました。ゼロからスタートしてここまでたどり着くことができたので、とても誇らしく思いました。そしてその夜、子どもたちも誇りに感じてくれていた姿を見て、とても感動しました。